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AI研修に使える助成金——2026年改正後の対象条件・実質負担・申請の流れ

AI研修に使える助成金——2026年改正後の対象条件・実質負担・申請の流れ

下岡 稔
2026.10.08

株式会社パンハウスの生成AI研修も、人材開発支援助成金を活用して受講できます。この記事では、研修会社を問わず使える制度の仕組みと、申請の注意点を解説します。

AI研修には、厚生労働省の「人材開発支援助成金」を使えます。中小企業が事業展開等リスキリング支援コースを使えば、研修費の75%と、研修中の賃金の一部(1人1時間1,000円)が支給されます。

ただし、2026年に入って注意点が増えています。

  • 2026年8月の改正で、「汎用的なプロンプトの作り方」のような、業務に直結しないAI研修は対象外になりました
  • 2026年4月の改正で、eラーニングの助成の上限が半分になりました
  • 事業展開等リスキリング支援コースは、2026年度末(2027年3月)までの時限措置です

この記事では、どんなAI研修が対象になるか、いくら戻るか、いつまでに何をすればよいかを、厚生労働省の最新資料(2026年8月3日版)をもとに整理します。申請でつまずきやすい点や、経理・財務の側で準備しておくことにも触れます。

AI研修に使える助成金とは

AI研修で使われる助成金の中心は、厚生労働省の人材開発支援助成金です。企業が従業員に業務に関わる知識や技能を身につけさせる訓練を行ったときに、研修費の一部(経費助成)と、研修中の賃金の一部(賃金助成)が支給されます。いくつかの「コース」に分かれていて、研修の目的や内容によって使うコースが変わります。

助成金と補助金は、もらえる仕組みが違う

よく混同される「補助金」とは、仕組みが大きく違います。

助成金(人材開発支援助成金など) 補助金(IT導入系の補助金など)
主な所管 厚生労働省(労働局) 経済産業省・自治体など
もらえるかどうか 要件を満たせば、原則として支給される 公募に応募し、審査で採択された企業だけ
申請できる時期 通年(研修ごとに申請) 公募期間だけ
お金が入る時期 研修のあと(後払い) 原則、事業のあと(一部に概算払いあり)
AI研修との相性 研修そのものが対象 ツール導入に付属する研修など、限られた場合のみ

AI研修を単体で実施するなら、まず検討するのは助成金です。どちらも原則として後払いなので、研修費はいったん企業が全額を支払うことになります(資金繰りの考え方は、後半の「経理・財務の実務」で解説します)。

どんなAI研修が対象になるか—2026年8月の改正後の線引き

AI研修でよく使われる事業展開等リスキリング支援コースは、2026年8月3日に「対象にならない訓練」の範囲が変わりました。それまでは、DX・GXに関する訓練であれば、どの業務にも共通する汎用的な内容でも対象になる例外がありました。改正でこの例外がなくなり、業務に直結した内容かどうかが問われるようになっています(厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点について」)。

厚生労働省の資料では、「マナー、リテラシー、概念理解にとどまっていないか」が判断のポイントとして示され、生成AIについて次のような例が挙げられています。

研修の内容 判定 根拠
営業担当者が、生成AIを使って商品提案書の構成案作成・文章生成・修正方法を学ぶ 対象 厚労省の資料の例
汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ 対象外 厚労省の資料の例
DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ 対象外 厚労省の資料の例
AIツールの導入費用(ライセンス費など) 対象外 対象は研修の費用だけ
研修の中で、実際の業務の成果物を作るだけの時間 対象外になりやすい 業務そのものはOFF-JTではなくOJTになる

つまり、「生成AIとは何か」「うまい指示の書き方」を全社共通で学ぶだけの研修は対象になりにくく、「営業の提案書」「経理の書類チェック」のように、部署や業務ごとに生成AIの使い方を学ぶ研修が対象になりやすい、という線引きです。個別の研修が対象かどうかは、最終的には管轄の労働局が判断します。

なお、改正前に研修会社との契約・申込を済ませていた場合(2026年8月2日以前)は、計画届の提出が8月3日以降でも改正前のルールで申請できる経過措置があります。

いくら戻るか——計算方法と実質負担

事業展開等リスキリング支援コースの助成額は、「経費助成」と「賃金助成」の合計です。

助成額 = 研修費 × 経費助成率 + 賃金助成額(1人1時間あたり) × 研修時間 × 受講者数

中小企業 大企業
経費助成率 75% 60%
賃金助成(1人1時間あたり) 1,000円 500円
経費助成の上限(1人1訓練、対面・同時双方向型のオンライン) 10時間以上30万円/100時間以上40万円/200時間以上50万円 20万円/25万円/30万円
経費助成の上限(1人1訓練、eラーニング・通信制) 15万円(時間に関係なく一律) 10万円
1事業所の上限 1年度1億円 1年度1億円

出典:厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(詳細版)」令和8年8月3日版

実質負担の試算

研修費が1人40万円、就業時間内に12時間のオンライン研修(同時双方向型)を行い、受講者全員が出席要件を満たした場合の試算です。

中小企業 10名 中小企業 30名 大企業 30名 大企業 100名
研修費 400万円 1,200万円 1,200万円 4,000万円
経費助成 300万円 900万円 600万円(上限) 2,000万円(上限)
賃金助成(12時間分) 12万円 36万円 18万円 60万円
助成額の合計 312万円 936万円 618万円 2,060万円
実質負担(研修費−助成額の合計) 88万円 264万円 582万円 1,940万円

中小企業なら、1人40万円の研修の実質負担は1人8.8万円です。大企業は経費助成が1人20万円の上限で止まるため、実質負担は1人19.4万円になります。

試算がずれる主なポイント

  • 上限に引っかかる……1人あたりの研修費が高いと、経費助成が上限で止まります。中小企業で10時間以上100時間未満の研修なら、1人40万円を超えた分は75%が掛かりません
  • eラーニングの上限は低い……2026年4月8日の改正で、eラーニング・通信制の上限は中小企業30万円→15万円に下がりました。さらに8月3日以降の計画届では、eラーニングの受講は1人1年度1回までです
  • 就業時間外の研修は賃金助成が出ない……経費助成は対象のままですが、賃金助成は所定労働時間内の分だけです
  • 欠席した時間の賃金助成は出ない……出席要件を満たしていても、欠席した時間の分は賃金助成が減ります
  • 出席が8割を下回ると、その人は全額対象外……その受講者の分は、経費助成も賃金助成も受けられません
  • 社労士に依頼する費用……申請を社労士に依頼すると、その報酬が別にかかります

申請の流れとスケジュール

申請は「研修の前」と「研修の後」の2回です。

  1. 社内の準備……「職業能力開発推進者」を選び、「事業内職業能力開発計画」を作って従業員に周知する。あわせて、研修の各回の日時と受講場所を確定させる。オンラインの同時双方向型でも、配信元と受講場所を計画届に書く必要がある。いずれも計画届の提出までに
  2. 職業訓練実施計画届を提出……研修開始日の6か月前から1か月前までの間に、管轄の労働局へ出す(電子申請も可)
  3. 研修実施……当初の日程及び受講場所どおりに研修を実施し、日程や受講場所を変えるときは、事前に変更届を出す
  4. 支給申請……研修終了日の翌日から2か月以内に、出席記録、支払いの証拠、出勤簿・賃金台帳などの労務関係書類を添えて申請する
  5. 審査・支給……審査は支給申請のあとにまとめて行われる。計画届が受理されても、支給が確定するわけではない。支給までは、支給申請から目安で6か月程度かかる

支給申請から支給までは目安で6か月程度ですが、都道府県の労働局ごとに差があります。厚生労働省は目安の期間を公表しておらず、資料にも「他の助成金よりも支給可否の決定までに時間がかかる」と書かれています。入金までには余裕を見ておきましょう。

2027年3月の終了を見据えたスケジュール

事業展開等リスキリング支援コースは、「令和8年度末までの時限措置」とされています。このコースで研修を計画するなら、早めに動き、管轄の労働局に扱いを確かめておくのが確実です。

研修の開始月 計画届の締め切り(1か月前) 社内で動き始めたい時期
2027年1月 2026年12月 2026年10月中
2027年2月 2027年1月 2026年11月中
2027年3月 2027年2月 2026年12月中

研修会社の選定、カリキュラムの調整、社内の準備(推進者の選任・計画の作成)に2か月前後かかるため、計画届の締め切りのさらに2か月前には動き始めたいところです。

2027年度以降については、厚生労働省の概算要求(2026年8月)で人材開発支援助成金のコースを再編する案が示されていますが、まだ確定していません。後継の制度がどうなるかは、予算が決まる年度末にかけて明らかになる見込みです。

対象外・不支給になるケースと、事前に防ぐチェック

助成金は「計画届を出して、そのとおりに研修を実施し、終わってから申請する」制度です。審査は研修のあと(支給申請のとき)に行われるので、研修を始める前と実施中の段取りで、受け取れるかどうかが決まります。

よくある失敗 何が起きるか 事前に防ぐためのチェック
研修を始めてから計画届を出した 対象外 研修の開始日を決めたら、その1か月前を社内の締め切りとして管理する。間に合わなければ、研修の開始日のほうをずらす
受講者の出席が8割に届かない その受講者は支給対象外 全回を業務として予定に入れる。録画の視聴は出席にならない。有給の日も欠席として扱われる
届けずに日程や受講場所を変えた 変更した部分は助成の対象外。計画届の日時で出席が数えられるので、出席要件を満たせず不支給になることもある 当初の訓練実施日と変更後の訓練実施日の、いずれか早い方の日の前日までに労働局へ変更届を出す
計画届と実際が食い違う 訂正・出し直しが必要。研修の開始後に分かった場合は、不支給になる可能性もある 訓練コース名、日程、受講人数が、カリキュラム・申込書・雇用契約の書類と一致しているかを確かめる
就業時間外に研修を行った 賃金助成が出ない 所定労働時間内に実施する。時間外にするなら、残業代と出勤簿の記録を前提にする
役員や業務委託の人も受講者に含めた その人は対象外 雇用保険の被保険者かどうかを、受講者名簿の段階で確かめる
研修費の一部を研修会社が返金する約束をした 不正受給と認定されうる 助成金は「企業が全額を負担した経費」が前提。キャッシュバックや実質的な値引きの約束がないか、契約書を確かめる
受講者が海外から参加した 対象外 オンライン研修でも、受講場所は国内にする
不正受給(出席の水増し、書類の偽造など) 全額返還に加え、延滞金(年3%)と違約金(20%)。原則として企業名も公表される 「研修費をキャッシュバックする」といった営業には乗らない

経理・財務の実務——入金時期、会計処理

助成金の記事ではあまり触れられませんが、経理・財務の側でも準備しておくことがあります。

研修費は全額を先に支払う

助成金は「企業が研修費を全額負担したこと」が前提です。支給申請では支払いの証拠を出すので、研修費は支給申請までに全額を支払っておく必要があります。その後、審査を経て助成金が入金されるまでには数か月以上かかることがあります。その間は研修費の全額を立て替えることになるので、資金繰り表に織り込んでおきましょう。

支払証憑の保存と提出

研修費を支払ったことを示す証憑(請求書、振込明細、領収書など)は、支給申請のときに提出します。申請のあとも労働局から確認を求められることがあるので、支払証憑は保存しておく必要があります。

複数の会社が合同で受講し、代表の1社がまとめて支払う場合は、他の会社が代表の会社に支払ったことを示す書類(振込明細など)も必要になります。

助成金は「研修をした事業年度」の収益になる

助成金をいつ収益に計上するかは、決算をまたぐときに問題になります。法人税基本通達 2-1-42 では、職業訓練の費用などを補うために支給される給付金は、支給額がまだ確定していなくても、その訓練を実施した事業年度に、支給を受けるべき金額を見積もって益金に算入するとされています(国税庁 法人税基本通達 2-1-42)。

人材開発支援助成金は、研修の費用と研修中の賃金を補う給付金です。そのため、この通達の考え方に沿うと、次のようになります。

ケース 収益の計上時期の考え方
研修も入金も同じ事業年度 その事業年度の収益
研修は当期、入金は翌期 研修をした当期に、受け取る見込み額を未収入金として計上し、入金時に差額を調整する
審査で不支給・減額になった 確定した事業年度に、見積もっていた額との差を調整する

「入金されたときに収益にすればよい」と考えがちですが、決算をまたぐ場合は扱いが変わる可能性があるので注意してください。

その他の処理

  • 消費税……助成金は、何かを売った対価ではないので、消費税の課税対象外(不課税)です(消費税法基本通達 5-2-15)
  • 勘定科目……法令で決まった科目はありませんが、本業の売上とは分けて、「雑収入」などの営業外収益で処理するのが一般的です
  • 研修費そのもの……助成金を差し引いた額ではなく、支払った全額を研修費(教育訓練費)として計上します。助成金は収益として別に計上します

個別の会計処理・税務判断は、顧問の税理士と確認してください。

不正受給に関する論点

キャッシュバックは不正受給になる

人材開発支援助成金は、企業が訓練経費の全額を負担していることが支給の条件です。研修費を支払ったあと、実態のない「営業協力費」「紹介料」などの名目で、研修会社からお金が戻ってくるような取引は、実質的に全額を負担していないことになります。この状態で助成金を申請すると、不正受給になります。

「助成金を使えば実質無料」「負担ゼロ」をうたう営業は、この形になっていないか注意が必要です。助成金は研修費の一部を補う制度なので、正しく使えば企業には必ず自己負担が残ります。

実際に公表された事例

2025年12月19日、東京労働局は、研修会社のエッグフォワード株式会社が、人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の不正受給に関与したと公表しました(東京労働局の公表資料)。

  • 手口……研修を委託した企業が、研修会社から資金の提供を受け、それを研修費の支払いの原資にしていた。実質的に研修費の全額を負担していないのに、助成金を申請していた
  • 研修会社の関与……東京労働局は、同社がこの不正スキームを考案し、企業に提案していたとしている

この事例では、研修会社だけでなく、助成金を受け取った企業の側も不正受給として扱われています。その後も、同じスキームによる申請が支給前に不支給とされた事例も公表されています(山梨労働局、2026年7月31日)。

不正受給になるとどうなるか

  • 受け取った助成金の全額返還に加え、延滞金(年3%)と違約金(20%)がかかる
  • 企業名が原則として公表される。2026年8月3日以降の申請は、支給決定の前でも原則として公表される
  • 不正受給から5年間は、助成金を受けられない
  • 不正に関与した研修会社なども公表の対象になる

「研修会社に勧められたから」という理由では、申請した企業の責任は消えません。契約・請求・入金の流れの中に、研修会社からお金が戻る仕組みがないか、申請前に確かめておきましょう。

研修会社に確認しておくこと

助成金を使う前提でAI研修を選ぶなら、研修の中身に加えて、次の点を契約前に確かめておくと安心です。

  • 計画届に添付するカリキュラム・時間割・各回の日時を、申請用の形で出してもらえるか
  • 訓練コース名が、申込書・カリキュラム・パンフレットでそろっているか
  • 社労士だけでなく、研修会社にも、助成金の支給まで至った過去の案件があるか
  • 日程変更のときに、変更届に間に合うように連絡してもらえるか
  • 返金やキャッシュバックを約束するような条件が、契約に入っていないか

なお、計画届や支給申請の書類を企業に代わって作成・提出できるのは、社会保険労務士です。研修会社が「申請サポート」をうたっている場合は、提携している社労士を紹介する形か否かを確かめておきましょう。社労士に依頼する場合は、代行費用(助成額に対する割合で決めることが多い)も実質負担に含めて試算してください。

AI研修の助成金についてよくある質問

Q1. オンラインのAI研修も対象ですか?

講師とリアルタイムでやりとりする「同時双方向型」のオンライン研修は、対面の研修と同じ扱いで対象になります。受講者が自宅から参加する場合も、計画届に使う会議システムの名称と視聴URLを書けば申請できます。eラーニングは「同時双方向型」の研修とは別の扱いになり、助成金の計算方法が異なる形となります。

Q2. パートやアルバイトも対象ですか?

雇用保険の被保険者であれば対象です。役員や業務委託の人など、雇用保険に入っていない人は対象外です。

Q3. 1人が何回でも受講できますか?

助成の対象になるのは、1人につき1年度(支給申請日で数えて、4月から翌年3月まで)3回までです。このうちeラーニングは1回までです(2026年8月3日以降の計画届)。

Q4. 自治体の補助金と併用できますか?

同じ研修の費用に、国の助成金と自治体の補助を二重に受けることは、基本的にできません。研修ごとに使う制度を分けて考えましょう。

Q5. 社労士に頼まないと申請できませんか?

自社で申請することもできます。ただし書類が多く、計画届の誤りがそのまま不支給につながるので、はじめてなら社労士に依頼する企業も多くあります。

Q6. 2027年4月以降もAI研修に助成金は使えますか?

厚生労働省は2027年度に向けてコースを再編する案を示していますが、まだ確定していません。

まとめ

  • AI研修には、厚生労働省の人材開発支援助成金が使える。事業展開等リスキリング支援コースなら、中小企業は研修費の75%と賃金助成1人1時間1,000円
  • 2026年8月の改正で、業務に直結した内容かどうかが問われるようになった。部署・業務ごとに生成AIの使い方を学ぶ研修が対象になりやすい
  • 計画届は研修開始の1か月前まで。出席8割以上、変更届、研修費の全額支払いといった段取りで、受け取れるかがほぼ決まる
  • 助成金は後払い。研修費を立て替える期間の資金繰りと、「研修をした事業年度」に収益計上する点に注意する
  • 事業展開等リスキリング支援コースは2026年度末まで。使うなら、早めに動き始めたい

参考・出典

いずれも2026年10月8日に確認。

助成金を活用したAI研修を検討しませんかパンハウスの生成AI研修は、人材開発支援助成金を活用して受講できます。部署や業務ごとの生成AIの使い方を学ぶカリキュラムの設計から、申請に必要な資料の準備まで、まずはお気軽にご相談ください。詳しくはこちら